こんにちは、倉田正樹です。 先日、初めてベネツィア映画祭に行ってきました。といっても、僕が出席するのではなく、北野武監督の『アキレスと亀』に主演した女優の樋口可南子さんのヘア&メイクをしたのです。この作品、僕もひと足早く見ましたが、とても素晴らしいので、ぜひ皆さんもご覧ください。
会場となった『エクセルシオーネホテル』は、ベネツィア空港から水上タクシーで30分くらい走ったリド島にあります。水上タクシーとは、ちょっと聞きなれない響きですが、街そのものが海上に浮かぶように存在するベネツィアでは、もっともポピュラーな交通手段。深夜23時、漆黒の闇を縫うように水上タクシーを高速で進み、運河の角を曲がると突然、煌煌とライトアップされたお城のようなホテルが目の前に出現!それがリドの『エクセルシオーネ ホテル』です。
早速ボーイさんたちに導かれ、ホテルの中に入ると、前夜祭が終わったばかりの会場は、熱気に包まれていました。
なんて素敵な大人たちがいっぱいいるのだろう それが僕の第一印象です。50代から60代の大人の女性が多いのですが、つややかに日焼けした肌が健康的でセクシー。レイヤーのたっぷり入ったダウンスタイルのウエーブヘアは、ボリュームがあってゴージャス。ウエストがすっとくびれたドレスをさらりと着こなしている様は、まさに大人の社交界といった感じ。ミニスカートを履き、惜しげもなく脚を露出している女性もいますが、おどおどせず凛としているので決してイヤらしくは見えません。エスコートしている男性たちは、タキシードではなく、仕立てのいいジャケットとパンツをコーディネートし、ちょっとカジュアルダウンしているところがまた心憎い感じです。夢のような空間で、そんな方たちと同じ時間を共有していると思うだけで、こちらもわくわくしてきます。
我らが樋口さんは、大和撫子らしくシックで美しい着物と帯を着用。ベースメークは品よくややマットに仕上げ、華やかさと艶やかさをだすため、全体をほんのりピンク色にしました。またヘアスタイルは、ショートカットの魅力をストレートに生かし、着物の上品さを際だたせることに。レッドカーペットを歩くたび、詰めかけたイタリア人たちから『ブラボー!』という喝采と、ため息、拍手の渦が巻き起こっていました。
あっと言うまのベネツィア映画祭でしたが、日本でも、これからはもっとこういった大人の社交文化が広がるといいな、と思うばかりです。